Special Interview
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長山口 育子さん
患者が自分にとって“最良”の治療を、納得して受けるためには、患者が主体的に医療に参加したり、少しの努力や働きかけを行ったりすることも必要なのかもしれません。そこで、がん経験者であり、医療関係者に対する教育活動も行っていらっしゃる、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長 山口 育子 さんに、患者さんの側から考える医療コミュニケーション、賢い患者になるためのヒント、医療関係者と良好な関係を築くためのヒント、および理想の協働的意思決定についてうかがいました。
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長山口 育子 さん
ささえあい医療人権センターCOMLは、1990年から活動を始めて、2020年に30周年を迎えました。1990年代では、患者は⾃分の医療情報を提供されることはありませんでしたし、「医療のような専⾨性の⾼いことを説明されても理解できない」「医師にお任せするしかない」といった、受け⾝の姿勢の患者がほとんどであったと思います。
しかし、例えば車を購入する際に、車選びをディーラーにすべて任せ、すすめられるものをそのまま購入することはありませんよね。病気とその治療は車選びよりもっと重要です。ときに病気はいのちや人生を左右する問題であり、そのような大切なことを人任せにするわけにはいきません。
そこで、「患者が自立・成熟し、主体的に医療参加すること」を目指し、「患者と医療関係者が対立するのではなく、“協働”する医療の実現」を目的として、COMLは活動をスタートさせました。
COML発足当時から活動理念として貫いてきたのは、患者である私たちは「しっかりと自立して、医療に主体的に参加する賢い患者になりましょう」と呼びかけることです。“賢い患者”になる第一歩は、自分自身が「いのちの主人公である」「からだの責任者である」という2つのことを自覚することです。だれも自分の病気を代わってはくれません。そのため、患者自身が自分のからだの責任者であることを自覚することが大事だと考えています。
30年間貫いてきたもう一つの理念は、「患者と医療関係者は決して対立する関係ではない」ということです。医療事故などのため医療側と対立せざるを得ない状況になってしまった場合を除き、患者は通常、医療関係者と同じ目標に向かって歩んでいるはずです。つまり、私たち患者は少しでも症状を軽くしたい、治りたいと思っていますし、医療関係者も患者を何とかしてあげたい、治したいと思っています。共通の目標に向かって二人三脚で歩むべきところを、対立していたのでは前には進めません。
そこで、COMLでは、対立せずに「“協働”しよう」と呼びかけています。「協働」には、同じ目標に向かって歩む立場の違う者同士がそれぞれの役割を果たす(コラボレーションする)という意味があることを知ってから、この“協働”の文字をこだわって使っています。
(公開:2021年3月)