1. 治験について

治験について

治験について

治験とは

治験とは、厚生労働省の「治験について(一般の方へ)」1)では、以下のとおり説明されています。
「化学合成や、植物、土壌中の菌、海洋生物などから発見された物質の中から、試験管の中での実験や動物実験により、病気に効果があり、人に使用しても安全と予測されるものがくすりの候補として選ばれます。このくすりの候補の開発の最終段階では、健康な人や患者さんの協力によって、人での効果と安全性を調べることが必要です。こうして得られた成績を国が審査して、病気の治療に必要で、かつ安全に使っていけると承認されたものがくすりとなります。人における試験を一般に臨床試験といいますが、くすりの候補を用いて国の承認を得るための成績を集める臨床試験は、特に治験と呼ばれています。」

すなわち、治験とは、試験管での実験や動物実験の結果選ばれた「くすりの候補」について、国の承認を得るために、健康な方や患者さんにご協力いただいて、ヒトでの効き目(有効性)や副次的な望ましくない作用がどの程度か(安全性)を主に調べる試験のことです。

治験は

  • 病気の解明や将来の医療の進歩のため、有効で安全な新しいくすりの誕生のため、欠かせないものです。
  • 参加される方々の人権の保護、安全の保持および福祉の向上を図り、データの信頼性を確保するため、「医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律(薬機法)」という国の法律と、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」という規則に従って行われます。
  • 治験が行われる各病院では「治験審査委員会」という組織が設置され、そこで、(治験の開始前から継続して)参加される方々の人権・安全・福祉が守られるか、治験が倫理的・科学的に妥当であるか、治験を継続してもよいかなどについて審議することになっています。
  • 治験への参加は、参加される方々の自由意思で決まり、強制ではありません。
  • 治験で得られたデータは、「くすりの候補」を開発している製薬会社に報告され、承認申請のため、最終的に国(厚生労働省)に提出されます。
  • 治験に参加された方々のお名前は個人を特定されないように匿名化され、個人情報は厳重に保護されます。

治験の段階(相)

国の承認を得るための治験は3つの段階―第I相、第II相、第III相―に分けて行われます。
また、くすりとして承認され、販売された後も、実際にくすりを使用される患者さんにご参加いただいて、さらにくすりの有効性、安全性などを調べる臨床試験が行われます。

がんの治験の場合、第I相試験の対象者は健康な人ではなく、がん患者さんを対象とすべき(一般的に認められた標準的治療によって延命や症状緩和が得られる可能性のあるがん患者さんを除く)とされています2)

治験に参加するメリットとデメリット

治験で調べる「くすりの候補」(治験薬)は、承認済みのくすりとは異なる新しい作用を持っていたり、有効性が同じまたはより良好であったりする(あるいは有効性が低い)かもしれません。
また、治験薬は試験段階にあるため、本当に安全かどうかは確立していません。そのため、予期されない副作用(副次的な望ましくない作用)があらわれる可能性があります。しかし、これを少しでも回避するために、第I相試験で少ない投与量から徐々に投与量を増やして試験することになっています。また、副作用や健康被害が発生した場合には最善を尽くした治療が行われるとともに、補償されることもあります(場合によっては賠償金が支払われることもあります)。

予期せぬ健康被害が生じたら3)

治験に参加したことによって、(治験を依頼した側[製薬企業等]または治験を行った医療機関などに法令違反や落ち度がなくて)参加した方に不利益が生じ、それが補償対象と判断された場合には、治験の依頼側から補償が受けられることがあります。補償としては、一般に「医療費」「医療手当」「補償金」が支払われます。
もし、治験の依頼側または医療機関などが法令に違反したことによって、参加した方に不利益が生じたときには、賠償責任が裁判などで認められた場合に、賠償金が支払われることになっています。

患者さんが治験への参加を検討する場合は、治験参加のメリットとデメリットを十分に考慮して、納得した上で決めることが大切です。

がん患者さんにとっての治験参加

がんの治療法は日々進歩していますが、がんを完全に治すことは現在でも難しい場合があります。また、がんの種類や進行の程度によっては効果のあるくすりがない場合や、使用していくうちにくすりが効かなくなってしまったり、(効かないなどの理由で)くすりを切り替えていくうちに最終的に使えるくすりがなくなってしまったりする場合があります。
このような場合に、新しい可能性を持った「くすりの候補」による治療を受ける治験への参加が選択肢の一つとなることがあります。

治験への参加

治験への参加は強制的なものではなく、参加される方々の自由意思で決まります。

  • 治験参加にあたっては、治験の目的、方法、治験期間中の注意点などについてくわしく説明されます。十分な説明を受けた上で、ご本人(またはご家族など)の同意を文書でいただくことになっています。
  • 参加するかどうか、説明されたその場ですぐに返事をする必要はありません。ご自宅に戻られてからじっくり考えたり、ご家族と相談したりしてから、参加するかどうかを決めていただくことができます。
  • 参加を断っても何ら不利益なことはありません。その後の診察や治療に影響することもありません。
  • 治験への参加をいったん決めた後でも、すでに参加している場合でも、どのような理由であっても・いつでも、参加を取りやめることができます。その際、その後の診察・治療などで不利益な扱いを受けることはありません。
  • わからないこと、不安に思うことなどがあったら、治験を担当する医師、治験コーディネーターなどが相談に応じます。

治験の情報

治験に関するくわしい情報が知りたい方は、厚生労働省の「治験」、日本製薬工業協会の「くすりについて」「新薬・治験情報」などのウェブサイトをご参照ください。
厚生労働省の「治験」の中の「治験等の情報について」のコーナーには、日本で実施されている臨床研究(治験を含む)の情報や、開発中の新薬情報を閲覧できるサイトも紹介されています。
また、国立成育医療研究センターのウェブサイトには「治験に関する用語集」がまとめられています。

※日本製薬工業協会(製薬協)は、製薬産業のさまざまな問題の解決やくすりに対する理解を深めるための活動などを行う団体で、多くの製薬企業が加盟しています。

  1. 厚生労働省「治験」「治験について(一般の方へ)」(2023年2月22日閲覧)※外部サイトに移動します
  2. 薬生薬審発0331第1号 令和3年3月31日「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドラインについて」(2023年2月22日閲覧)※外部サイトに移動します
  3. 日本製薬工業協会「医薬品評価委員会」「医薬品評価委員会の成果物」「治験説明リーフレット」(2023年2月22日閲覧)※外部サイトに移動します

(公開:2021年3月)