1. がんにかかわる費用と対策のためのヒント

がんにかかわる費用と
対策のためのヒント

がんにかかわる費用と対策のためのヒント

がんと診断されたとき、ご自身の病気の不安・心配に加え、医療費のこと、ご自身やご家族の生活費のことなどで心配になられるでしょう。高額ながん治療薬の登場、働く世代の方では休職・離職による収入減など、予想外に経済的負担が増えることがあります。
がんにかかわる費用には何があって、どのくらいの費用がかかるのでしょう。

がんにかかったときに必要な費用とは?

がんにかかったときに必要な費用として最初に思い浮かぶのは、手術費やくすり代などの治療費ですが、必要なのはそれだけではありません。
入院したら、入院費に加え、食事・日用品費用などが必要でしょう。先進医療を受けたら、その技術料は公的医療保険の対象外であるため、自己負担となります。また、ご自身やご家族が通院する度に交通費がかかりますし、治療を受けた後に気分がすぐれないときはタクシーを利用するかもしれません。いったん治療が終わっても、定期的な検査や経過観察のために通院が必要だったり、くすりの投与を続けるために費用がかかったりすることもあります。さらに、ウィッグなどのケア用品など、ここに挙げた以外にも思わぬ出費があるようです。

※先進医療とは、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」です1)。つまり、公的医療保険の対象にするかどうかを評価する段階にある治療法や技術などで、評価の結果、公的医療保険の対象となったり、評価療養の対象から外れたりします。

がんにはどのくらいの医療費がかかる?

医療費は、病気の進行の程度、受けた診察・検査・治療の内容などによって異なりますが、公益社団法人全日本病院協会の集計では、2019年の調査で1回の入院あたりにかかる平均医療費は約77~100万円(1日あたり約6.7~10万円)と報告されています2)

入院にかかる医療費平均(全日本病院協会による2019年度年間集計)2)

  1入院費用 1日単価 平均在院日数
胃の悪性新生物(がん) 953,595円 66,896円 16.6日
結腸の悪性新生物(がん) 924,594円 78,004円 14.3日
直腸の悪性新生物(がん) 1,022,965円 82,581円 15.3日
気管支および肺の悪性新生物(がん) 855,040円 89,480円 14.7日
乳房の悪性新生物(がん) 771,650円 98,739円 11.5日

公益社団法人全日本病院協会「診療アウトカム評価事業」「2019年度」「医療費」および「平均在院日数」より作表

※なお、公的医療保険がありますので、自己負担額はこの金額より少なくなります。

また、厚生労働省の「がん対策推進総合研究事業」の一環として行われた「がんによる生涯医療費の推計と社会的経済的負担に関する研究」※3) によると、9つのがんのうち5年間の平均医療費が最も高かったのは食道がん(567.7万円)で、次いで大腸がん(483.8万円)、肝胆膵がん(447.3万円)の順でした。5年間の入院医療費でも食道がんが783.2万円と最も高く、最も低い膀胱がんでも126.9万円の入院医療費がかかったと報告されています。外来医療費では、大腸がんの202.7万円が最も高く、最も低い子宮がんで52.6万円でした。

※2005年1月~2015年9月の健康保険組合データを用いて、5年間における9つのがん(乳がん、肺がん、肝胆膵がん、食道がん、胃がん、大腸がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮がん)の平均医療費(入院・外来)について検討した研究3)

平均医療費(2005年1月~2015年9月の健康保険組合データを用いた検討)3)

  5年間の医療費
食道がん 567.7万円
⼤腸がん 483.8万円
肝胆膵がん 447.3万円
肺がん 374.0万円
乳がん 250.5万円
胃がん 243.7万円
前立腺がん 196.1万円
膀胱がん 192.9万円
子宮がん 183.3万円

厚生労働省の「がん対策推進総合研究事業」の一環として行われた「がんによる生涯医療費の推計と社会的経済的負担に関する研究」より作表

がんにかかる費用にどう対処する?

このように、がんには高額な費用がかかります。この費用に対処するため「収入を補う・維持する」「支出を見直す・軽減する」の2点から考えてみましょう。

(1)収入を補う・維持する

公的制度を上手に利用しましょう。

高額な医療費を補いたいとき、休職や離職などで収入が減少したときなどに、どのような公的制度が使えるかをよく知っておくことが重要です。
高額療養費制度のことは知っていても、傷病手当金を受給できることや、障害年金ががんにも適用されることを知らないという方もいるようです。再就職を積極的に考えている方であれば雇用保険の基本手当(失業手当)が受けられるかもしれません。その他にも使える制度があるかもしれません。
公的制度の種類とその支給要件をよく確認し、利用できるものはすべて利用しましょう。

NPO法人「がんと暮らしを考える会」では、がん患者さんやご家族が利用できる「公的な支援制度」や「民間の支援サービス」を検索できるウェブサービス「がん制度ドック」を提供しています。ご自身の病状、ご希望などを入力するだけで、利用可能な制度・サービスが検索できます。

収入の確保を考えてみましょう。

国や都道府県、事業場、医療機関などで、治療と仕事の両立を支援する取組みが始まっています。働く世代の方であれば、どうしたら治療・療養生活をしながら働きつづけることができるか、復職・再就職できるかなど、職場、ハローワークなどで相談し、収入を確保する道を探してみましょう。

厚生労働省が公表している「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」には、事業場における両立支援の取組みや、支援制度・支援機関などがまとめられています。

(2)支出を見直す・軽減する

暮らしで生じる支出を見直してみましょう。

支出には、日々の暮らしの中で生じる「変動費」と、毎月決まった金額を支払う「固定費」があります。
変動費は見直しが容易なので、ここから取りかかろうとしがちですが、削減効果は意外と小さく、長期にわたる治療・療養生活でストレスなく長続きさせるのは難しいでしょう。

支出を見直すときは、固定費を抑えるところから考えるのが大切です。
固定費は削減効果が高く、一度見直しをしたら効果が持続するため、効率的です。

医療費負担を軽減する仕組みを知っておきましょう。

医療費負担を軽減する制度として、⾼額療養費制度や医療費助成制度などがあります。収⼊や年齢、勤務先、世帯の状況によって、負担額や助成の有無が異なるので確認してみましょう。例えば、加⼊している健康保険組合によっては、独⾃の付加給付を受けられるかもしれません。
また、医療費控除は、医療費そのものは軽減されませんが、納めた所得税が還付されるだけでなく、翌年の住民税が安くなります。通院のための交通費や院外薬局で支払った分なども対象になりますし、ご自身と生計を一にする配偶者その他の親族にかかわる医療費にも適用されます。

経済的に安定すると、治療・療養生活に関する心配事が少なくなり、心の安定化にもつながるでしょう。
費用に関することで悩むことがあったら、専門家に相談しましょう。どこに(だれに)相談したらよいかわからないときは、がん診療連携拠点病院等に設置されている「がん相談支援センター」で相談に応じています。

国立がん研究センター「がん情報サービス」の「お金と生活の支援」や、静岡県立静岡がんセンター「患者支援・相談」のウェブサイトには、費用についてのくわしい説明があります。

  1. 厚生労働省「先進医療の概要について」(2021年2月22日閲覧)※外部サイトに移動します
  2. 公益社団法人全日本病院協会「診療アウトカム評価事業」「2019年度」「医療費」および「平均在院日数」(2021年2月12日閲覧)※外部サイトに移動します
  3. 厚生労働省「がん対策推進総合研究事業」「がんによる生涯医療費の推計と社会的経済的負担に関する研究」(2021年2月22日閲覧)※外部サイトに移動します

監修:近藤社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
 近藤 明美

(公開:2021年3月)