Special Interview
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長山口 育子さん
患者が自分にとって“最良”の治療を、納得して受けるためには、患者が主体的に医療に参加したり、少しの努力や働きかけを行ったりすることも必要なのかもしれません。そこで、がん経験者であり、医療関係者に対する教育活動も行っていらっしゃる、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長 山口 育子 さんに、患者さんの側から考える医療コミュニケーション、賢い患者になるためのヒント、医療関係者と良好な関係を築くためのヒント、および理想の協働的意思決定についてうかがいました。
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長山口 育子 さん
患者である私たち自身が「いのちの主人公である」「からだの責任者である」ことを自覚すること、それが“賢い患者”であるために重要です。COMLが考える“賢い患者”になるための「新・医師にかかる10箇条」をご紹介しましょう。
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML
医療関係者とのコミュニケーションを良好にするためには10箇条のいずれの項目も役立つと考えていますが、特に重要な項目がいくつかあります。
その一つが、3つ目の「よりよい関係づくりにはあなたにも責任が」という項目です。
コミュニケーションはお互いが努力して成り立つものです。もしコミュニケーションが良好でないとしたら、患者さんの側にも責任があるのかもしれません。例えば、COMLでは患者さんからの電話相談を受けていますが、話し方一つをとっても、さらなる情報を探して伝えたくなるような方と、頭ごなしに怒鳴り続けられてあまり話を続けたくないと思ってしまう⽅もいます。へりくだったり、気を使いすぎたりする必要はありませんが、お互い人間なので、相手を尊敬する気持ちを持つことが大切です。相手に配慮し、相手の良いところを引き出すようなコミュニケーションをとったほうが、よい結果をもたらすと思います。
6つ目の「その後の変化も伝える努力を」という項目も重要です。
患者さんは、症状が悪化したこと、改善しなかったことは医療関係者に伝えていると思いますが、症状が良くなったことも伝えることが大切です。医療関係者も治療により改善したことがわかると励みになるでしょう。例えば、病気が改善して退院し、趣味の山登りが再開できたときに、山で撮った写真を葉書にして「ここまで元気になりました」と送ることが、人間関係の良い潤滑油になるでしょう。また、開業医であれば、外出の際に立ち寄って、受付の方に「良くなりました。先生によろしく」と伝えることだけでも、よい関係を築くことにつながるでしょう。
9つ目の「医療にも不確実なことや限界がある」についても説明しておきましょう。
がん患者さんにお話しすると、「よくこんな厳しいことを⾔いますね」と⾔われることがあります。私はCOMLの活動を通して、医療の不確実性と限界もみてきました。その結果、⼀⼈の患者として、医療に過度な期待をしなくなりました。だからといって、決して諦めているわけではありません。医療の不確実性と限界を知ったからこそ、医療と冷静に向き合えるようになり、どのような点で医療の⼒を借りることができて、どのような質問であれば答えてもらえるのかということがわかるようになったと思っています。
最後の項⽬「治療⽅法を決めるのはあなたです」もとても⼤切です。ただし、「⼀⼈で悩まないで」と必ず付け加えています。
(公開:2021年3月)