がん医療では、近年、エビデンスに基づく医療(EBM)と患者さん中心のコミュニケーション技能に基づく「シェアードディシジョンメイキング(協働的意思決定)」の重要性が強調されています。このシェアードディシジョンメイキングにより、患者さんにとって最適な医療・ケアが実現されるとの考え方が定着しつつあります1)。
シェアードディシジョンメイキング(協働的意思決定)とは:
患者さんやそのご家族が医療関係者と話し合い、協働して一緒に意思決定を行う方法のことを指します2)。それぞれが持つ情報として、医療関係者は治療法等に関する「科学的な根拠(エビデンス)」などを、患者さんはご自身の考え、希望、価値観などを共有し、治療法を選択した理由も共有し、どの治療法が患者さんにとって最善かを一緒に決めるプロセスを共有します。
※エビデンスとは、ある治療法の有効性や安全性を示す科学的な証拠のことです。
シェアードディシジョンメイキングでは、患者さんと医療関係者が、お互いに持つ情報や目標を共有しますが、共有を進める基盤となるのが「患者さんと医療関係者の良好なコミュニケーション」です。
エビデンスには、研究の進展状況などによって“確からしさ(確実性)”の高いものと低いものがあります。治療法の有効性や安全性のエビデンスの確実性が低い場合には、選択肢が複数あることが多く3)、患者さんの価値観や希望も十分に考慮した上で治療法を選択する必要があります。
また、シェアードディシジョンメイキングでは、目標がある程度明確な場合と、患者さんと医療関係者が十分なコミュニケーションをとる中で、目標が明確になり、共有されていく場合があります。
患者さんにとって“最良”の治療を選ぶには、患者さんと医療関係者が相互に何を重視しているかを理解することが必要です。そのためには、意思決定の過程への患者さんの積極的な参加が必須といえるでしょう。
監修:慶應義塾大学看護医療学部 准教授
大坂 和可子 先生
(公開:2021年3月)