がんと告知されたとき、再発してしまったとき、患者さん本人はもちろん、ご家族も同じようにショックを受け、つらく、不安やストレスを感じることでしょう。ご家族の心や体への負担、くらしの負担もとても大きなものと思います。
患者とどう向き合ったらいいのか、わからない・・・
自分が本人や家族を支えなくてはならない・・・
自分には何もできない、無力さを感じる・・・
自分は弱音を吐けない、本人はもっとつらいのだから・・・
そんなご家族のため、患者さんと向き合うためのヒントをご紹介します。
ご家族にしかできないことをする―例えば、患者さんのそばにいて、患者さんの話に耳を傾けることで、患者さんはきっと安心されるでしょう。
患者さんの話にできるだけ向き合って、患者さんが言うことを否定せず、気持ちを尊重する姿勢を示すことが大切です。患者さんはときに、答えを求めていたり、アドバイスがほしいわけではなく、気持ちや不安を共有してほしいと願っているだけなのかもしれません。意見や価値観を押しつけたり、無理に説得したりしないことも大事です。
患者さんの体調のこと、治療についてなど、気になることや心配なことがある場合は、遠慮せず医療関係者に相談しましょう。また、患者さんにつらい症状や不安などがある場合や、患者さんの好みや希望などがある場合に、患者さんが医療関係者に直接伝えにくいと感じているときには、患者さんご本人の気持ちをご家族が医療関係者に伝えるサポートをすることができます。伝えることで、医療関係者が対処できることがあるかもしれません。ただ、ご家族が先走ってしまい、患者さんの想いとは違うことを伝えてしまうことがないように、気をつけましょう。
患者さんだけでなく、ご家族が正しく新しい情報を得て、病気のことや治療への理解を深めることで、患者さんもご家族も、知らないことによる不安が軽減され、将来に向けての現実的な見通しを立てることに役立つでしょう。また、正しく新しい情報は、ご家族自身の無力感を振り払うのにも役立つかもしれません。
ご家族がご自身で情報を収集したら、患者さんにとって“最良”の情報であるかどうか、医療関係者に必ず相談しましょう。
ご家族は、ご自身やご自身の生活も大切にしてください。ご家族は、「本人はもっとつらいのだから」と、ご自身のつらい気持ちをがまんしたり、がんばりすぎて身体的・精神的な苦痛を抱えていることが少なくありません。患者さんご自身もご家族も、「心にフタをしないで、感じたままにその状況と向き合う」ことも大切です。
患者さんをサポートするためにも、ご家族はご自身もいたわり、ご自身への支援を他に求め、ご自身の生活も大切にしましょう。
患者さんにとっては、ご家族の存在そのものが支えになります。がん治療は長期戦です。焦らずに、一歩一歩前に進むことが大切です。ご家族の心のメンテナンスも不可欠ですから、ときに弱音を吐くこともよいでしょう。少し疲れてしまったときは、少しだけお休みし、好きなことに時間を費やすのもよいかもしれません。
ご家族を支える人もたくさんいます。患者さんもご家族も、気持ちがつらくなってしまったときは、まず医療関係者に伝えましょう。また、がん診療連携拠点病院等に設置されている「がん相談支援センター」や病院の「相談窓口」は、患者さんだけでなく、ご家族からの幅広い相談にも応じています。ご家族を対象とした「がん家族外来」を設けている病院も増えています。
また、患者さん同士の支え合いの場に参加してみるのもよいかもしれませんね。
がんになったからといって、再発したからといって、患者さんとご家族の関係が大きく変わるわけではありません。それまでの患者さんとご家族との関係をそのまま大切にしてください。患者さんのご家族として、困難や悩みが生じたときは、ためらわずに医療関係者、友人などに相談しましょう。
国立がん研究センター「がん情報サービス」のウェブサイトなどには、患者さんのご家族に向けたヒントが紹介されていますので、ご参照ください。
監修:公益財団法人がん研究会有明病院 腫瘍精神科 部長
清水 研 先生
(公開:2021年3月)