思春期・若年成人をAYA(adolescent and young adult)世代と呼び、定義はさまざまですが、一般に、15~39歳を指します。
さまざまなライフイベントに直面する時期に「がん」という病気を抱え、身体的・精神的・経済的にいろいろな影響を受けたり、将来に対する不安を感じたりすることも少なくないでしょう。
不安や悩みを抱え、どこ(だれ)に相談したらよいかわからないときは、がん診療連携拠点病院等に設置されている「がん相談支援センター」や病院の「相談窓口」で相談することをおすすめします。
また、患者さん同士の支え合いの場に参加してみることもよいでしょう。
日本では、近年、AYA世代のがん治療や対策が十分でないという認識から、さまざまな検討が進められ、支援策が拡充しつつあります。
AYA世代のがん患者さんに向け、お役立ち情報を掲載しているウェブサイトもありますので、ご参照ください。
AYA世代を対象とした調査1)によると、がんの経験の有無や年代にかかわらず、AYA世代の最も大きな悩みは「自分の将来」でした。また、がんの経験の有無にかかわらず、「仕事」がAYA世代の悩みの第2位で、がん経験者の年代別では15〜19歳は「学業」が第4位、これ以外の年代すべてで「仕事」が第2位を占めていました。
AYA世代のがん経験者における学業の継続状況をみると1)、治療をしながら学業を継続した患者さん(44.8%)と、継続したいができなかった患者さん(49.3%)の割合はほぼ同じで、継続したくないと答えたのは6.0%でした。継続できなかった理由で、最も多かったのは「通院や治療のため学習時間の確保が難しい」であり、次いで「健康や体力に自信がない」「意欲がもてない」「学業の継続を支援する(活用できる)制度がなかった」の順でした。また、「学業を継続できない・したくない」と答えた患者さんの多くが、休学(40.5%)または退学(16.2%)していたという状況です。
入院・治療中で「復学・進学できるだろうか」「出席日数が足りない・進級できるだろうか」といった精神的な問題を抱え、不安で気持ちがいっぱいになるときがあるかもしれません。でも、一人で悩まずに、「がん相談支援センター」や病院の「相談窓口」、ご家族、友人などにいまの気持ちを伝えてみましょう。他の患者さんの体験談が参考になることもあります。
学業の問題への対処の仕方については、先ほど紹介した「全国AYAがん支援チームネットワーク」や「AYA世代のがんとくらしサポート」に加え、国立がん研究センター「がん情報サービス」の「がんと学校」も参考になるでしょう。入院時から復学後の学校生活まで、患者さんとそのご家族が抱えるさまざまな問題に関する解決策が示されています。
厚生労働省の「がん患者・経験者の就労や就労支援に関する現状と取組」2)によると、がん患者さんの3人に1人は就労可能年齢でがんを発症しており、仕事を持ちながら悪性新生物(がん)の治療で通院していた患者さんは30万人以上でした。
しかし、働きつづけられる環境だと思うか(がんの治療や検査のために2週間に一度程度病院に通う必要がある場合)について、「そう思わない」と回答した患者さんが64.5%(「どちらかといえばそう思わない」35.2%+「そう思わない」29.3%)と3)、がんの治療と仕事の両立は難しいと考えている患者さんが多いことがわかります。
しかし、がん患者さん(経験者を含む)が「病気になっても自分らしく活き活きと働き、安心して暮らせる」ことをめざして、国も、がん診療連携拠点病院等も、企業やハローワークも、就労支援の取組みをはじめています。
厚生労働省の「治療と仕事の両立支援ナビ」や「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」は、がん以外の疾患を含め、治療と仕事の両立支援を行うための環境整備や両立支援の進め方がくわしく記載されています。事業者向けですが、就労者本人やご家族、医療関係者など支援に携わる方にも活用できるものです。
厚生労働省の「仕事とがん治療の両立お役立ちノート(平成29年度版)」や国立がん研究センター「がん情報サービス」の「がんと仕事」には、がんとともに働くさまざまな場面での問題点への対処の仕方が解説されています。参考にしてみてください。
価値観やライフスタイル、学業・仕事に対する考え方は人によってさまざまです。これらの情報を参考に、ご自身に合った解決策を得るためのヒントをみつけてください。
患者さんを応援してくれている人、したいと思っている人はたくさんいます。一人で悩まず、まず相談してみましょう。
監修:公益財団法⼈がん研究会有明病院 腫瘍精神科 部長
清水 研 先生
(公開:2021年3月)