1. 第4回オンラインシンポジウム開催レポート

第4回オンラインシンポジウム開催レポートを公開

第4回オンラインシンポジウム開催レポートを公開

武田薬品工業は2月19日、「これからのがん医療とケア」オンラインシンポジウムを開催しました。シリーズ4回目のテーマは、「がんについての正しい情報を知ろう、使いこなそう!」。登壇者による講演や質疑応答のダイジェストをご紹介いたします。

【開催レポート】

武田薬品工業 公開オンラインシンポジウム 第4回「これからのがん医療とケア」2月19日

シンポジウム冒頭では、約8割の方が「自身で入手したがん情報が正しいか不安に思うことがある」と答えた、申込時アンケートの結果を公表しました。多くのがん患者さん、ご家族、支援者の方々から関心をお寄せいただいた今回のシンポジウム。登壇者3名による講演では、がん患者さんご家族・医師・がん相談支援センター相談員と、それぞれの立場から有用な情報や経験談、具体事例を紹介いただき、前回を上回る400名超の視聴者から共感や納得の声が多く寄せられました。

講演1:正しい情報の周知を目指して

認定NPO法人 希望の会 理事長 轟浩美様

自分が見ている情報に限りがあるかもしれない、と一度立ち止まってみること

轟様には、「正しい情報の周知を目指して」と題して講演をいただきました。轟様は、配偶者がスキルス胃がんステージⅣの告知を受けた当時、すぐに治療に入ってしまったため、正しい情報を知り、相談できる「がん診療連携拠点病院」や「がん相談支援センター」があることを知ることができなかったといいます。社会からの孤立を感じて引きこもり、自分たちの解釈で突き進んだという轟様は、新聞広告や書籍は信用できる正しい情報だと思い込み、「大学教授の推薦」「海外ではがん治療に使用されている」などのパワーワードを鵜呑みにしていた、と自身の経験を語りました。SNSの影響力も増し、玉石混淆(ぎょくせきこんこう)の情報の中から根拠の乏しいものを取り除くことが難しい近年の情報社会の中で、注意すべき3つのキーワードを提唱しました。

  • 1. アンコンシャスバイアス
  • 2. エコーチェンバー
  • 3. フィルターバブル

です。インターネット上で、自分に見えている情報に限りがあるのかもしれない、二つの意味での「やさしい(気持ちに優しく響く・取り入れ易い)」情報を自分に都合よく選んで取得していることにも気づいた、と実体験を明かしました。このような情報に左右される後悔を少なくしたい、と患者会を設立し、スキルス胃がんに関する冊子作成や、病気・治療・臨床試験について理解を深める場づくりをするなど、精力的な活動の様子を語りました。轟様は、「希望の会」の名のとおり、自分が踏み出した一歩が、例え小さくても、より良い未来に繋がるかもしれないことを願って、今後も活動を続けたいと締めくくりました。

講演2:確かながん情報の見分け方

国立がん研究センターがん対策研究所 事業統括 若尾文彦先生

科学的な根拠を持った「確かな」がん情報とは

若尾先生の講演では、医療情報を読み解くために必要な4要素など、具体的に活用できる知識を紹介いただきました。

若尾先生は、「新しい情報を見つけたら、飛びつく前に、懐疑的に批判的に吟味する癖をつけることが大事。インターネットの検索結果に広告が表示されることがあったり、科学的根拠に基づかない情報が溢れていたりするという前提を知っておくこと」と要点を伝えました。
また、「標準治療と最新治療」「免疫療法」など誤解されやすい用語例や、誰でも騙されてしまう「思考の錯覚」があるといったことをわかりやすく解説。公的機関の情報を取ること、判断に迷ったら、情報発信の母体はどこか・目的は何かを参考にするのも良い、などのポイントを伝え、情報の見極め方のまとめとして、頭文字を並べると「かちもない」と覚えやすい表現を引用されました。

  • 書いた人は誰
  • 違う情報と比べたか
  • もとネタはなに
  • 何のために
  • いつ

中山和弘先生 ヘルスリテラシー学習用eラーニング教材より引用

最後に若尾先生は、「国立がん研究センターが提供している『がん情報サービス(※外部サイトに移動します)は、全国の医療者や患者さんにご協力いただき、公平性・中立性・バランスを考慮し情報発信を行っています。使ったことのない方にもぜひ活用いただきたいです。情報は力。情報を活かすためにも、がん相談支援センターと併せて活用してください」とメッセージを送りました。

講演3:がん患者さんとご家族の困りごと
~がん相談支援センターでうかがう相談から~

大阪国際がんセンター がん相談支援センター長  池山晴人様(社会福祉士)

「不安や恐れ」を整理して、解決に向かうお手伝いを

池山様のご講演では、がん相談支援センターに関しての基礎情報や相談の具体事例など、まだ利用された経験がない方にもわかりやすくご紹介いただきました。

がん相談支援センターとは、 「情報の入り口」として全国453箇所(2023年2月現在)のがん診療連携拠点病院と都道府県指定の拠点病院に存在し、

  • 1. 誰でも(院内・院外、患者・家族を問わず、匿名でも問題なく、無料で)
  • 2. 信頼できる情報を
  • 3. 中立の立場で橋渡しすることで
  • 4. 自ら解決できるように支援する

部署であることを紹介。
池山様は、「がんの診断後、来週までに治療法やこれとこれを決めてください、と医師から言われ、患者さんは何から手をつけるべきかわからなくなってしまう。この不安と恐怖のもつれた糸をほどくには、正確な情報と相談が大変重要だと思います」と、現場での経験を話しました。がん治療の時期によって相談内容に特徴があり、診断から治療開始までには、どのような治療や病院を選べば良いのか、また治療開始後は、セカンドオピニオンや担当医師との関係構築などの相談をされる方が多いといいます。
また住まいの近くの「地域統括がん相談支援センター」や、支援サービスの質が一定基準を満たしていると認められた「国立がん研究センター認定がん相談支援センター」に相談するなど、かかっている病院でなくとも相談できることも紹介。池山様は、「がんは要所要所で意思決定が求められる疾患。がんにならないことを選ぶことはまだできないが、がんと診断された後、どのように向き合っていくかについてのお手伝いをしています。これからも皆さんの情報探しの入り口になればと思っています」と、まとめました。

質疑応答ダイジェスト

シンポジウム後半は、川上祥子様のファシリテーションで、登壇者全員による質疑応答を実施。当事者ご家族としての体験や、がん相談支援センターでの実例などを交え、事前質問と当日視聴者からお寄せいただいた質問に回答しました。

川上様

轟さんは当時がん情報サービスや相談支援センターは活用されたのですか?

轟様

診断から半年以上経ってから知りました。診断されて治療に入る時に一番不安があって、そのタイミングでアクセスしてほしいけれど、実際はある程度治療が進んでから、色々なリソースがあると知る方が多い印象があります。若尾先生がいつも見せてくださるこのようなカード(「がん情報さがしの10ヵ条」)(※外部サイトに移動します)がありますが、初診の際にがん診療連携拠点病院じゃなくても、担当者から渡されるだけでも違うし、一度は相談支援センターに行っておく流れができると、利用される方がもっと増えると思います。

若尾先生

一方で、診断直後は本当に頭が真っ白になって何も考えられない方も多いです。その期間は長くて二週間ほどですが、そこで慌ててもがくと、さらに自分を追い込んだり落ち込んだりしてしまいやすい。みんな悩むのは当たり前だと思っていただいて、焦らずに少し周りに関心が持てるようになってから、がんの情報や相談先・病院の情報を探し始めることをお勧めします。

川上様

混沌とした状態で、相談することすらまとまっていないという方でも利用できますか?どんなふうに切り出したら良いかわからないといった、参加者からのコメントもありました。

池山様

例えば先日も相談対応したのですが、ひとり親家庭で近くに親族もいらっしゃらず、ご自身の入院治療中、小さなお子さんのお世話をどうすればよいか、などですね。頭の中に浮かんだことをとにかく持ち込んでいただくと、お話しを伺う中でさらに色んな課題が出てくることがよくあります。その時のもっとも重要な課題を相談員が一緒に整理し、解決方法をご提案することができますので、何となく不安、どうしていいか分からない、という状態でも、ぜひがん相談支援センターを使っていただければと思います。実際、相談内容が明確にならない状態で訪れる方もいらっしゃいます。

川上様

こんなに素晴らしい相談支援センターを、多くの人が活用できるように何か取り組みや工夫はされていないのですか?というご質問があります。

若尾先生

これまでは「もしも、がんになったら(※外部サイトに移動します)という冊子を患者さんに渡していましたが、やはりそれだけでは伝わらないというところで、池山さんの講演にもありましたが、がん診療連携拠点病院の中で治療開始までに必ず一度は相談支援センターに立ち寄る体制をつくることを目指す、というのが国の整備指針に加わりました。実際に相談はしなくても、何か不安や心配があった時に、相談できる場所があったなと思い出していただけたらと思います。また、先ほどの冊子を病院だけでなく公立の図書館や地域の集会所などでも配布いただいています。ご自身やご家族、ご友人のために、がんになる前から知っておいていただきたい最低限の情報、がん相談支援センターやがん情報サービスの紹介などを載せていますので、ぜひ活用いただきたいです。

池山様

また、がん相談支援センターは入り口の一つでありますが、拠点病院では、外来や病棟の看護師さんなども非常に多くの取り組みをされています。問診を詳しく行い、その方がどのようなことにお困りになりそうかを考え、がん相談支援センターへ立ち寄るお声がけや院内での連携をすることで、がん相談支援センターに繋がる大きなきっかけになっています。身近にいる方にまずちょっと相談をしてみる、そして相談の窓口があるということを知っていただければと思いました。

質疑応答ではこのほか、サプリメントに関する情報をどう見分けるか、がんの治療中でなくても、またひとりで治療にあたる場合の相談でもがん相談支援センターが利用できるか、といった質問を取り上げました。最後に轟様は、こんなに素晴らしい資源があることを知り、相談したり頼ったりすることが力になるとの意識改革が大事、とコメント。池山様は、ぜひ相談支援センターを利用してフィードバックをいただきたい、とメッセージを送りました。若尾先生は、「世の中に溢れる正しくない情報を一人で判断するのは難しい。一人で悩まないで、がん情報サービスやがん相談支援センターなど多くの資源を活用してほしい」とまとめました。

<上記のほか、討議したご質問>

  • サプリメントに関する情報をどう見分けるか
  • がんの経過観察中で、治療中でなくてもがん相談支援センターに相談できるか
  • ひとりで治療にあたる場合の相談も、がん相談支援センターにして良いか

ご視聴後のアンケートでは、99.5%の方が「今回のシンポジウムで得た情報が有益であった」と回答。また91.8%の方が「今後、がん相談支援センターを利用したい、または既に利用している」と回答いただきました。

ご参加後の感想(アンケートより抜粋)

  • SNSでがん情報をあさっていたが、自分に都合の良い物ばかり見ていると気づいた。今後の人生にとって心強い情報を得られた。
  • 再生医療の情報を最近頻繁に見かけ、惑わされていたが、エビデンスや内容を吟味し、主治医に隠さず相談することが大切だと思った。
  • 難しい医療情報の理解を一人で頑張るよりも、相談支援センターや患者会など身近な場所をすぐに頼るなど、自分にもできる事をすればいいのだとわかった。
  • がん当事者は孤立しがちで、確かな情報に辿り着きづらいと感じることがある。今回のようなシンポジウムは有効で、多くの人に届く創意工夫をしてほしい。

今回のシンポジウムでも、お申込み時のアンケート、当日質問やご参加後アンケートにて、多くの率直な質問やコメントをお寄せいただきました。ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。
武田薬品工業では、今後もがん患者さんとご家族の心のケアや、予防や治療に関する普及啓発の観点で、がん患者さんの気持ちに少しでも寄り添い課題解決につながるご支援ができるよう、活動を継続してまいります。
次回の「これからのがん医療とケア」シンポジウムは、2023年秋頃開催予定です。

シンポジウム概要

これからのがん医療とケアvol. 4 ~がんについての正しい情報を知ろう、使いこなそう!~

  • 日時:

    2023年 2月19日(日)13:00~14:30

  • 対象:

    テーマにご関心のある方ならどなたでも

  • 主催:

    武田薬品工業株式会社

  • 後援:

    厚生労働省、東京都、公益財団法人日本対がん協会、国立研究開発法人国立がん研究センター

プログラム

[司会] がん情報サイト「オンコロ」メディカル・プランニング・マネージャー 川上祥子様

  • 講演1:

    『正しい情報の周知を目指して』
    認定NPO法人 希望の会 理事長 轟浩美様

  • 講演2:

    『確かながん情報の見分け方』
    国立がん研究センターがん対策研究所 事業統括 若尾文彦先生

  • 講演3:

    『がん患者さんとご家族の困りごと~がん相談支援センターでうかがう相談から~』
    大阪国際がんセンター がん相談支援センター長 池山晴人様(社会福祉士)
    質疑応答:[回答者] 轟浩美様、若尾文彦先生、池山晴人様
    [ファシリテーション] 川上祥子様